他者に関心を持つこと(視線がとどく)

私は、IPR研究会に所属していますが、2020年2月29日の総会でいったん解散になります。ただし、私はこの研究会で人間関係で一番大事な事を学びました。それは、「他者に関心を持つ」ということをトレーニングのなかで学んだからです。

現代の合理主義、技術主義、効率主義というものが、簡単に目に見えるものしか大切にしてこなかった。目に見えなくても大事なものはたくさんあります。それを見る感性をひつようとするような、よく見ればみえるもの、これらを排除してしまっているのが、現代のように思えます。だから、人間がおかしくなって当然なのです。

良い人間関係とほんとうの人間関係とは違う。他人のいいところだけで付き合おうとする。異質な性格の人の中に入ることに慣れていないので、異質な部分ばかり見て、付き合おうとしない。だから摩擦したり、ぶつかり合ったりすることに対して、恐れたり、悪い事であるような考えが生まれる。そういう中で結局は自分を殺しているのです。なれ合いの人間関係からは、本物の人間関係は生まれない。

「視線がとどく」という体験は、本性上相互的かつ共時的な体験です。そのことが体験された時、見る人と見られる人との間に、「分かり合えた」という深く強い感覚が成立する。他者理解の核心は、対人関係の生きた関わり合いのなかで、ひとみを届かせ合い、互いに相手が「見える」ようになる出来事である。したがって、他者理解は、その他者が生きている限り、終結したり完結したりすることはない。

研究会誌IPRNo.9 1999年(早坂泰次郎インタビューより)